北原白秋 句集「雀の卵」より「茶の煙」2020年10月26日

巨匠の和歌と俳句展

岡山・吉兆庵美術館にて開催中の「巨匠の和歌と俳句展」では、江戸時代の松尾芭蕉や良寛をはじめ、明治から昭和にかけて活躍した歌人や俳人の作品、約50点を一堂に公開しています。 全部で18人の作品が楽しめ、今回の「美術館のピックアップ情報」では、北原白秋の名歌をご紹介します。

北原白秋

明治18年(1885年)1月25日―昭和17年(1942年)11月2日。
日本の詩人、童話作家、歌人。 詩、童謡、短歌以外にも、新民謡の分野でも傑作を遺している。生涯に数多くの詩歌を遺し、今なお歌い継がれる童謡を数多く発表し、活躍した時代は「白露時代」と呼ばれ、三木露風と並んで評される、近代の日本を代表する詩人である。
下記写真:公益財団法人北原白秋生家記念財団提供

茶の煙 幽(かす)かなれかし 幽(かす)かなる 煙なれども 目に染(し)みるもの

歌集『雀の卵』に「茶の煙」と題された4首があります。
茶の聖(ひじり) 千の利休に あらねども 煙のごとく 消(け)なむとぞ思ふ
茶の煙 幽(かす)かなれども 現身(うつしみ)の 朝餐(あさげ)の料(しろ)に 立てし茶の煙
茶の煙 消(け)なば消(け)ぬべし しまらくを たぎる湯玉の 澄みて冴〔さ〕えたる
茶の煙 幽(かす)かなれかし 幽(かす)かなる 煙なれども 目に染(し)みるもの
当館では最後の句を展示しております。
解釈としては、
私は茶の聖人の千利休ではないけれども茶を湧かすときの煙のように消えようと思う。
茶を沸かす時の煙は、かすかではあるが、私の朝食で飲むために茶を沸かす時に出た煙である。
茶の煙が消えるのならば消えてしまえばいい、しばらくの間、沸騰した泡は澄んで、澄み切っている。
茶の煙はかすかであってほしい。かすかな煙ではあるけれども目に染みるもの
最後の第4句は、すばらしい煙だといっても、煙たいものは煙たいのだ、と言っているようです。

岡山・吉兆庵美術館にて開催中「巨匠の和歌と俳句展」

その人の人柄や性格を映し出すといわれる書。この機会に教科書にも登場する歌人・俳人たちの直筆の句をご覧になりませんか。

岡山・吉兆庵美術館(岡山市北区幸町7-28)
企画展:「巨匠の和歌と俳句展」
会期:令和2年9月8日~11月8日