「寓意」を込めた花鳥絵図屏風2020年12月19日

雅やかな世界展 屏風と漆芸に見る ジャパン・ビューティー

岡山・吉兆庵美術館にて開催中の「雅やかな世界展 屏風と漆芸に見る ジャパン・ビューティー」では、源氏物語、花鳥絵図、童子絵図などの屏風と優雅な蒔絵を施した漆器や温かみのある鎌倉彫を一堂に公開し、日本が現代に受け継いできた美意識を感じていただく内容になっています。 今回、「美術館のピックアップ情報」では、その中から「花鳥絵図屏風」をご紹介します。

花鳥絵図の歴史

中国宋代の庶民の間で描かれていた花鳥画は、その優美さから次第に、士大夫(したいふ)と呼ばれる貴族階級の文人が芸術品として楽しむだけでなく、植物や生き物に子孫繁栄、立身出世、不老長寿といった縁起を表す「寓意」を画中に盛り込んで、理想や価値観、心情、教訓や戒め、時の政権への風刺も描くようになります。 日本にも、こうした文化が渡来し、屏風や襖に花や鳥の姿が描かれ始めます。室町時代になると大画面の花鳥画が盛行し、ここに幕府の御用絵師であった狩野派が大和絵の技法を取り入れ、金碧の花鳥絵図を確立させます。以降、装飾的障屏画として花鳥画が最も洗練された題材として用いられ、今日にも遺る花鳥絵図屏風が多く描かれるようになります。

「寓意」の一例

「雀」は群れで一緒に行動する様子から、子孫繁栄、家内安全といった幸福を運ぶとされています。また、丸まるとした愛らしい姿から豊かさも象徴します。また、竹と一緒に描かれると、さらに縁起が上がります。しっかりと大地に根を張り、真っ直ぐに伸びる「竹の強い生命力」と群れで行動する「雀」を合わせて一族繁栄の象徴とされ、ますます縁起の良い図柄となります。独眼竜政宗で有名な伊達家の家紋でも、この組み合わせが見られます。 「藤」は、病気で困っている相手に「不治」という悪い意味で贈る場合もあれば、「不死」という良い意味で贈る場合もあります。このように贈る相手によって意味合いが変わるのです。 花鳥絵図のこのような見方を知って鑑賞すれば、より楽しんでいただけるのではないでしょうか

岡山・吉兆庵美術館にて開催中「雅やかな世界展 屏風と漆芸に見る ジャパン・ビューティー」

当時の宮廷の様子を生き生きと描いた源氏物語や狩野派の絵師が描いた花鳥画図の屏風をこの機会にご覧になりませんか。