初代 宮川香山「真葛窯変釉蟹彫刻壺花活」2022年10月04日

初代 宮川香山 生誕180年記念

岡山・吉兆庵美術館にて開催中の「初代 宮川香山 生誕180年記念」では、激動の明治・大正時代を駆け抜けた初代 宮川香山の焼物を中心に、“幻のやきもの”横浜真葛焼を展示しています。

今回の「美術館のピックアップ情報」では、「真葛窯変釉蟹彫刻壺花活」をご紹介します。

初代 宮川香山って、どんな人?


 京都で代々陶工を生業とする家に生まれた初代 宮川香山は、19歳で家業の真葛窯(まくずがま)を継ぎます。明治維新を迎え、日本が近代化へと向かい激動する中、高名な真葛窯も経営難に陥り、明治4年(1871)には横浜へ真葛窯を開窯して、海外向けの陶磁器を制作しました。花瓶や壺に動植物を写実的で立体的に表現した技法は、海外で高く評価され、国内外の博覧会で受賞を重ねます。
 しかし、時代の潮流により嗜好が変わると、次は釉薬の研究開発に打ち込んで、濃淡を繊細に表現した優美な作品を制作し、再び高く評価されました。
 明治29年(1896)には、帝室技芸員に選出され、日本の近代陶芸界を代表する人物となります。 その後、四代まで継承された真葛焼でしたが、昭和20年(1945)の横浜大空襲で窯を焼失しています。

「真葛窯変釉蟹彫刻壺花活」(吉兆庵美術館所蔵)

明治期の代表作(東京国立博物館所蔵・重要文化財)を晩年の73歳の時に改めて制作した傑作です。
 褐色の高取釉の鉢から写実的なワタリガニが飛び出しているかのような迫力です。凝視すると二匹の蟹が貼り付いており、その精巧さに驚くばかりです。
 また、いびつな形をした土台の鉢にも窯変釉による色彩の調和が見られ、立体的装飾の超絶技巧を感じられる逸品です。

岡山・吉兆庵美術館にて開催中「初代 宮川香山 生誕180年記念」

 今回の展示は、真葛焼コレクションのなかでも、初代 宮川香山を中心に三代までの作品をクローズアップして展示。
 横浜生まれの超絶技巧と華麗な色彩の真葛焼をこの機会にご覧になりませんか。


岡山・吉兆庵美術館(岡山市北区幸町7-28)
企画展:「初代 宮川香山 生誕180年記念」
会期:令和4年9月3日(土)~12月18日(日)