常識を超えたやきもの2020年07月16日

横浜真葛焼の世界

岡山・吉兆庵美術館にて開催中の「横浜真葛焼の世界」(会期:~8月30日)では、明治・大正に活躍した陶芸家、真葛焼の初代宮川香山から三代までの作品、約80点を一堂に公開しています。

「幻のやきもの」

真葛窯は代々京都で茶陶を手掛ける窯元でしたが、貿易が自由化されたのをきっかけとして、明治4年に新天地である横浜へ移窯させました。万博をはじめとする国際大会で数々の賞を受賞し、また初代香山は帝室技芸員(人間国宝の前身)という栄誉ある立場に認定され、国内の陶磁器界を牽引する存在でした。しかしながら、昭和20年の横浜大空襲の戦火によって窯は焼失し、横浜で花開いた真葛窯は途絶えてしまいました。海外での人気が高く、作品の多くは輸出され、日本ではあまり作品が遺っていません。このことから、現在では「幻のやきもの」と呼ばれています。

「真葛窯変釉蟹彫刻壷花活」(まくずようへんゆうかにちょうこくつぼはないけ)

「陶芸の魔術師」「明治の三大名工」など様々な異名でも知られるほど、他に類を見ない美しい陶磁器を生み出した横浜真葛焼。
今回は展示作品の中から、最大の見どころである「真葛窯変釉蟹彫刻壷花活」をご紹介します。初代宮川香山が晩年に制作した作品で、自身が39歳の時に制作した作品(重要文化財)に倣った姉妹品です。戦前の陶磁史を代表する作品の一つで、褐色の高取釉の鉢に、生き生きとしたワタリガニが張り付いています。

目を凝らして見ると、手前の蟹のさらに奥にはもう1匹の蟹が隠れています。複雑に絡みあう蟹の足にはそれぞれ、本物と見間違えるほどの細やかな模様が絵付けしてあります。さらに鉢の高台に目を転ずると、丁寧に作り込まれた蟹とは対照的に、いびつにヘラで削り込んだ、造形物としての面白味を味わうことができます。

岡山・吉兆庵美術館にて開催中「横浜真葛焼の世界」

大迫力の蟹が付いた焼物を見学しに、岡山・吉兆庵美術館を訪れてみてはいかがでしょうか。

岡山・吉兆庵美術館(岡山市北区幸町7-28)
企画展:「横浜真葛焼の世界」
会期:令和2年6月20日~8月30日