食にまつわる工芸 菓子木型と伊万里焼2021年01月09日

食にまつわる工芸 菓子木型と伊万里焼

鎌倉・吉兆庵美術館の今回の展示では「食にまつわる工芸 菓子木型と伊万里焼」として、珍しい菓子木型と古染付、伊万里焼を展示中です。
今回の「美術館のピックアップ情報」では、「菓子木型」をご紹介します。

菓子木型の歴史

古来より、菓子類を作る際に型を使うことは世界各地で行われてきました。日本の場合は平安時代に菓子の生地を竹の筒に入れ、押し出してカットするという製造方法が、菓子木型の始まりとも言われています。本格的に、日本の菓子木型が発展するのは、明和時代 (1764~72)と言われています。文政時代(1804~30)に入り、彫刻の裏彫り技法が使われ、かわら版や錦絵の元版が活発に彫られるようになると、同様に、菓子屋も精巧な菓子木型を彫刻師に彫らせるようになります。明治になると様々な干菓子が創案され、それに伴い菓子木型も全盛期を迎えます。戦後、菓子木型が空襲で消滅したため、落雁や生菓子の大型木型で作る引菓子が出来なくなり、さらに大家族から核家族への生活スタイルの変化にともなう住宅事情も重なり、茶引きと呼ばれる小型生菓子に移行し、菓子木型は昭和40年頃を境にほぼ終焉を迎えることになります。

菓子木型の種類とデザイン

菓子木型は目的とする菓子によっていくつかの種類があります。板型(一枚型) 、二枚型 、割型、 両面型などがあり、様々な大きさや形の型を使用することで、独自の表現を大量に製造することが可能となります。また、一般によく知られる、鯛や蓮の花のデザインだけではなく、その土地特有のデザインが存在し地方色も見られます。
失われつつある文化ですが、菓子木型が生活に即した芸術として、今後注目されるかも知れません。そのような視点から今回の展示をご覧いただくと、より一層興味深いものになるはずです。

鎌倉・吉兆庵美術館にて開催中「食にまつわる工芸 菓子木型と伊万里焼」

今回は100点以上の菓子木型を展示しています。これだけの点数の珍しい菓子木型を一堂に展示する機会は滅多にありません。併せて、当時の茶人たちに愛された古染付や中国磁器を参考に日本で独自に発達させた伊万里焼をご紹介いたします。