大黒天をモチーフにした三代 宮川香山の「極彩色福神意置物」に注目!2021年10月12日

秋の景色と豊穣の美

 岡山・吉兆庵美術館にて開催中の「秋の景色と豊穣の美」では、
秋のモチーフとして描かれる、紅葉・菊・月とススキ・米俵などの代表的な絵柄をテーマにした書画と工芸品の展示をしております。
今回の「美術館のピックアップ情報」では、三代 宮川香山「極彩色福神意置物」をご紹介いたします。

「幻の焼物」宮川香山の横浜真葛焼

 明治維新の到来とともに、1859(安政6)年に横浜港が開港されると欧米では日本ブームが巻き起こります。
その中に「マクズ・ウェア」と呼ばれ世界を魅了した、宮川香山の「横浜真葛焼」があります。小動物や植物を写実的に表した高浮彫や、釉下彩と言われる技法を作り出し、時代が求めるスタイルを完成させます。
 しかし、1945(昭和20)年の横浜大空襲で工房とともに職人たちが被災死し、終焉を迎えます。国内外の博覧会で数々の名誉に輝いた「横浜真葛焼」はわずか80年ほどで姿を消し、現代では「幻の焼物」とも言われています。

「極彩色福神意置物」

 大黒天は大黒様とも呼ばれ、福を授ける7人の神々からなる七福神の1人として広く親しまれています。福の神はさまざまなご利益を与えてくれるとされていますが、大黒天は烏帽子を被り、手には打ち出の小槌を持ち、五穀豊穣の神として祀られています。
 展示中のこの作品では、米俵の上に烏帽子と打ち出の小槌が置かれ、そこに白いねずみがよって来ています。ねずみは大黒天のピンチを救ったという話があり、それから大黒天の傍らに描かれるようになります。ここでは大黒天を象徴する3つのシンボルだけで、主役を連想させるという“とんち”の利いた作品になっています。
 まるで本物と見間違うかのような藁の表現、丁寧に彩色された烏帽子や打ち出の小槌、今にも動き出しそうなねずみ。超絶技巧で有名な宮川香山のすばらしい仕事を見ることができる逸品です!

岡山・吉兆庵美術館にて開催中「秋の景色と豊穣の美」

 秋が深まるこの季節だからこそ見たい、秋をテーマにした芸術の数々をご鑑賞下さい!

岡山・吉兆庵美術館(岡山市北区幸町7-28)
企画展:「秋の景色と豊穣の美」
会期:令和3年9月17日~11月14日