『源氏物語』を屏風で楽しむ2022年10月07日

ボンボニエールとエレガントな世界


鎌倉・吉兆庵美術館にて開催中の「ボンボニエールとエレガントな世界」では、菓子の器・ボンボニエール、屏風・蒔絵など、様々な分野の工芸品を展示しています。
 
今回の「美術館のピックアップ情報」では、その中でも「源氏物語絵図屏風」をご紹介いたします。

『源氏物語』を屏風で楽しむ


『源氏物語』は、平安時代中期に紫式部によって創作された長編物語で、光源氏を主人公とした、恋愛と苦悩、平安貴族の風俗を描いています。
日本の古典文学を代表する『源氏物語』は、様々な画派によって描き継がれてきました。

源氏物語絵図屏風「紅葉賀」の段


 『源氏物語』の中でも有名な一場面が「紅葉賀」の段です。光源氏と頭の中将が十月の行幸で催される舞楽「青海波(せいがいは)」を予行で舞っている様子が描かれています。
 夕映えのする紅葉の陰で、きらびやかに舞う光源氏のあまりにも美しい姿は桐壺帝をはじめとする宮中の人々の称賛を浴びます。
 その一方で桐壺帝の妻・藤壺は、義理の息子である光源氏の子を宿すという秘めごとに苦悩し、心は憂いに沈むのでした。

 そうした心穏やかでない場面でありながらも、貴族の艶やかな衣裳が楽しめるのも『源氏物語』ならでは。頭に白菊を挿し、紅葉文様の衣を着用した源氏と、紅葉を挿し、菊文様の衣を身にまとった頭の中将の舞が季節の訪れを告げます。庭の紅葉も色づき、より一層秋の風情を彩っています。

鎌倉・吉兆庵美術館にて開催中「ボンボニエールとエレガントな世界」

さらに本展では、『源氏物語』と共に『伊勢物語』絵図屏風も展示しています。
芸術の秋、洗練された工芸品を鑑賞しながら、いにしえの世界へ心をいざなってみてはいかがでしょうか。

鎌倉・吉兆庵美術館(鎌倉市小町2丁目9-1)
企画展:「ボンボニエールとエレガントな世界」
会期:令和4年9月17日(土)~11月27日(日)